トニイ・ヒラーマン『死者の舞踏場』(1973)


ズニ族の少年と、その友人であるナヴァホ族の少年が行方不明になった。ナヴァホ族警察のリープホーン警部補は、ズニ族警察と共同で二人の捜索を始めた。が、ズニ族の少年は遺体で発見され、さらに新たな殺人事件が。やがてFBI麻薬取締官も介入し、事態は複雑な様相を呈してくるが……アメリカ探偵小説作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した傑作。(裏表紙あらすじより)

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ヒラーマンは初めてでしたが、なかなか面白い。リープホーンは自分の「行方不明の少年探し」という任務を優先して、他にちょっかいを出さないので、麻薬が話に絡んでいるのかはよく分からないまま進みます。そのこともそうですし、また少年がなぜ逃げているのかすら分からず、話がいま一つ焦点を結ばないというのがこの作品の肝。リープホーンと一緒に少年を追い、証拠のもろもろを手に入れていくうちに、ようやく全容が見えてくるわけです。

ネイティヴアメリカンの風習や、他の探偵では描けない一風変わった追跡行など、主人公のユニークな設定ならではの面白さで、退屈している暇はありません。250ページ強の作品ですが、数時間で読めます。数年前に耳にしたある事件を思わせる動機と、その伏線が秀逸。オススメです。

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この作品の中身にはさほど関係ありませんが、読書の一助として、ナンシー・Y・デイヴィス『ズニ族の謎』(ちくま学芸文庫)をご紹介。だいぶ前に読んだ本ですが、このズニ族と日本人の類縁関係を探った興味深い研究書です。その論理は幾分無理筋ですけど、ネタとしてはなかなか面白いかと。