変な小説、まかり通る

2009年は、なんだか「奇天烈翻訳小説」の当たり年であるようです。先のエントリで紹介したマット・ラフ『バッド・モンキーズ』も大概な作品ですが、昨年末に刊行されたドゥエイン・スウィアジンスキー『メアリー-ケイト』、そしてそれに続く『解雇手当』の両作品は、腹がよじれるような気ちがいじみた笑いを提供する作品でした。新潮社も負けじとマイケル・シェイボンユダヤ警官同盟』、ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』、エリック・ガルシア『レポメン』を刊行しましたが、いずれ劣らぬ秀作揃いです。東京創元社は、昨年の『最高の銀行強盗のための47ヶ条』(傑作!)に続いて、トロイ・クック『州知事戦線異状あり!』を刊行しています。さすがに前作よりは落ちますが、安定して面白い作品です。泣ける警察小説かと思ったらとんでもない方向にかっ飛んで行った『時限捜査』もこの「奇天烈翻訳小説」の範疇に入れてかまわないでしょう。

個人的には未読なのですが、ベネット・ダブリン『夢で殺した少女』もとてつもない作品だとか。また、みすず書房から刊行されたアラン・ムーアフロム・ヘル』も、読んだ人はみな圧倒されているようです。これも欲しいのですがなかなか手が回りません。そのうちに何とかしたいところではありますが。

これらの作品は、その面白さがかなりニッチであるだけに一般的な人気を得にくく、「このミステリーがすごい」などのムック本で日の目を見ることが少ないのは残念なことです。表面的な、大きな盛り上がりに欠ける本を出し続けるのは難しいでしょう。しかし、私としてはこういった「変な小説」を絶やさないでほしいと祈りながら、本を買うことくらいしかできません。ぜひとも声援に応え頑張って欲しいものです。