トマス・H・クック『夏草の記憶』(1995)

夏草の記憶 (文春文庫)

夏草の記憶 (文春文庫)

トマス・H・クックの<記憶シリーズ>第二作。真実を仄めかしつつ読者をストーリーに引き込んでいく手腕は前作『死の記憶』と変わらず健在。主人公の年齢層が小学校高学年から高校生に上がったことによって、読者へのダメージの大きさは大幅アップといえよう。また前作は結末の付け方が若干ぬるく、そこに不満を感じたが、今回は結末の醜さ・苦さと、逃げ場を許さないトドメの一撃の秀逸さがマッチしている。読後感は暗澹たるものだが、紛れもない傑作。(11/24)

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主人公のヘタレ少年が自分の高校時代の姿と若干ダブって、ラストは辛かった……。『緋色の記憶』『夜の記憶』もいずれ劣らぬ傑作と聞きますので、早く読みたいところです。