クレイグ・トーマス『狼殺し』(1978)

狼殺し (河出文庫)

狼殺し (河出文庫)

冒険スパイ小説の傑作。19年前、仲間に密告され、さらに危うく殺されかかった男が、己の魂の尊厳を掛けて、復讐を実行する。しかしその陰では、諜報組織の中の二重スパイ炙り出し作戦が進められ、男はその計画を成し遂げるために利用されていく。正直、分かりやすいハッピーエンドでは決してない。個人と組織の間の相克、己の尊厳と国家の威信の対立、英露のスパイ戦争の中で、各人の思惑が蠢きだす。(11/27)

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真に優れた人間ドラマは、道具立てが古びても決して輝きを失わないことの好例といえます。文庫版は新古書店などでも比較的見かけますので、ご一読を。魂が燃え上がる一作です。