アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』(1944)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

メアリ・ウェストマコット名義の傑作。クリスティー全作の中でも屈指の良作であろう。良き妻、良き母親であろうとしてきたある女が、ふとしたきっかけから己の人生の真実に気がついてしまうというだけの作品。殺人事件も名探偵も登場しないが、これほど残酷で哀しい物語も他にない。しかしながら、救われることのないまま、誰も彼女を救わぬままに物語は幕を下ろす。ひとりぼっちのプア・リトル・ジョーンよ、悲しみに沈め。(12/2)

    • -

最近、またクリスティー未読潰しを始めました。クリスティー文庫で読んだのが、46冊なので、ようやく半分といったところ。長編で言えば、74作品中39作品。最初期と50年代末以降が抜けまくりですね。短編集や戯曲はほとんど未着手。次は、『リスタデール卿の謎』か、ポアロものの『満潮に乗って』を読もうと思ってます。