フリッツ・ライバー『跳躍者の時空』(2010)

研究とか研究とか研究とか、あともっぱら怠惰の所為で間が空きました。

最近面白かった新刊とかの話を書こうと思います。

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フリッツ・ライバー『跳躍者の時空』(奇想コレクション

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

IQ160のスーパー猫ガミッチのシリーズ5作+ノンシリーズという構成で全10作品を収録しています。値段は若干高いですが、それだけの価値のある短編集です(断言)。
ライバーは、特別小説巧者という訳ではないのですが、引き込まれるものがあります。たとえば中編「『ハムレット』と四人の亡霊」は、劇中で亡霊役を演じる酔いどれの老俳優が、死してなお役を演じ続ける、というだけのお話としては他愛ないものです。しかし、一人で自分の無能さをぼやき続ける語り手や、一座の人々の賑やかな描写には目を見張るものがあります。また、巻末の初訳作「春の祝祭」は、セクシーで知的な美女がいきなり部屋を訪ねてくる発端からぶっ飛んだ結末まで、童貞青年の哀しみと悦びがみっちり詰まった傑作でした。ネビュラ・ヒューゴーの両賞を受賞した「骨のダイスを転がそう」が再録・新訳されているのも、個人的には嬉しいところです。